私が、このブログの主テーマとしている公的年金の消滅時効の規定は、国民年金法では、第8章 雑則 の最初に分類されている。この雑則により、極めて重大な障害年金が理由もなく違法に不支給とされているケースがある。雑則というイメージからは、細々とした雑多な規則という感じを受けるが、消滅時効の規定は極めて基本的な通則的性質を有する。
因みに民法では、第1編 総則 第7章に「時効」があり、消滅時効はその第3節に納まっている。これは、どこに納まっていても、その効力に直接的に影響するものではないが、厚労省や法務省の指定代理人によって、この規定が極めて雑に解釈され、多くの受給権者に不利益を生じさせていることを私は許せない。極論を言えば、この規定を国の思うように運用したいのであれば、そのように規定を改正して行なえば良い。合理的に改正することは、厚労省にとって決して難しいことではない。そして、その際、この規定が疎かにされないよう、第1章 総則 に移したら良いかもしれない。
名古屋高裁に言わせれば、平成24年4月20日判決の障害基礎年金支給請求控訴事件における国の論理は破綻していることになる。二つの大きな論点について、「被控訴人(国)は、判決理由とは異なる見解を縷々主張するが、いずれも採用することはできない」と、全く同じ表現を2回も繰り返されている。名古屋高裁の3人の裁判官がここまで表現するのは、確たる根拠のあることである。
それでも国は、名古屋高裁の判断がおかしく間違っているという。その理由は、今まで多くの高裁判断では名古屋高裁のような判断はなく、かつこれら判断は最高裁でも支持されているという。
しかし、国から出された裁判例を読むと、そもそも、名古屋高裁で控訴人が主張したような、障害年金は停止条件付債権的債権であるといった論点につき論争の無い裁判例である。そのような裁判例を幾つ出しても、最高裁が名古屋高裁の判断を否定している証明にはならないことは明白である。
時の経過とともに、新しい根拠が出て来るが、国の主張を根拠付けるものは全く出て来ない。これを根拠付ける内容は、本法(国年法、及び厚年法)の中にあるのであるが、今まで原告が負けている裁判例を見ると、憲法、民法、年金時効特例法、国家賠償法等を主な主張根拠としているので、国の屁理屈に負けてしまっている。
勿論、この中では、民法の規定は深く関係するが、論点を見ると時効以外の規定を駆使し過ぎている嫌いがある。具体的には、1条2項、同条3項、90条、93条、及び147条3号である。私は、民法で主張しなければならないのは、第166条1項だけで十分であると考える。
多くの裁判等で、原告等が負けているので、本来正当な受給権があるのに、国が違法に不支給としている事実は一向に拡がらない。ジュリスト5月号(労働判例研究bP226号)には、この国の見解を支持するような学者の片手落ちな視点から見た評釈が載せられておりなお更である。社会保険審査官や社会保険審査会もこの問題には係りたくない一心で、入り口論で屁理屈を付けて棄却や却下をしている。棄却の場合は、自己に都合の良い審査資料だけから審査したものであり、却下の場合は、「時効消滅理由不支給通知部分」を単なる事実の通知であるから、官会法の適用にならないというものである。
しかし、恥ずかしいことに、審査会は、つい先ほどまで、これを特別の法律の規定に基づかない「行政措置」であるとしており、ご都合主義の見解変更である。そもそも、この部分は、両方の性質を持つ。裁定(決定)通知書に付帯して通知されていること、及び年金事務所で、これが個別の時効援用であると説明されているところをみれば単なる事実の通知と言えないことは明らかである。
厚生労働省に人事権のある機関でこのような大きな問題を判断すること自体に無理のあることはある程度分かる。しかし、障害者が裁判を提起するのは多くの障害があり一般的には大変なことである。簡易迅速な救済が望まれるが、余程の勝訴判決を積み重ねなければ不服申立てによる救済の道は開かれそうにない。本年5月19日には、国の法解釈誤りという一般論についても最高裁が判断しているのだが、国の屁理屈には困ったものである。
しかし、私は厚労大臣に対して異議申立書を出し続ける。官会法が不適用なら、行政不服審査の一般法に立ち戻り、同法に基づき厚労大臣への異議申立てである。こちらは、単なる事実の通知(事実行為)でも、不作為でも適用対象となり、本来却下できない筈である。幾ら蹴られても同様である。何故なら、勝訴判決が重なれば、ここで拒否することが国にとって害になるからである。我々にとっては、国の主張が絞られてきて、訴訟を進め易くなり、かつ、勝訴した場合でも通常認められない弁護士費用が認められ易くなるからである。
2014年09月13日
総則と雑則
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 14:51| Comment(0)
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