2022年01月29日

最高裁判決も所詮一個別事件である


私が第一審だけでも10件以上の事件について国と争っている障害年金支分権消滅時効の裁判について、平成29年10月17日最高裁判決(44号判決)が出されて以後は、特段の事情のある事件を除けば、全ての下級審判決について、44号判決を引用して、深く吟味することなく誤った判決が下されている。

しかし、44号判決は、所詮、弁論主義に基づく一個別事件にすぎない。44号判決を担当した弁護士は、私が主張しているような44号判決の理由に根拠がない旨の主張をしていない。

私は、44号判決は裁定前に時効進行していることを前提にしている事件であり、一連の裁判においても、私が主張しているような上記の内容の主張がない事件であるから、判例として使えないものであることを主張しているが、全ての下級審判決で、敢えて、44号判決を引用して、結論ありきの誤った判決を続発させている。

裁判所には、強力な執行権があり、我々はそれに抗うことは、ほとんど不可能である。

そこで私が最大の武器としているのが、日本年金学会への投稿論文である。幸い、1月26日(水)にその審査結果が到達し、「条件付き採用」となった。

条件付きといっても、文献の引用表現や表現・構成上の問題等であり、私の主張自体を否定するコメントは一切ない。お二人の査読者は、このテーマが重大なテーマであること及び捨てがたい主張であることをお認めいただいているので、来月中頃(締め切りは、月末)には改稿原稿を再提出する予定である。

これが採用され、学会誌に掲載されれば、これを引用した主張を裁判官も無視できなくなり、社労士法25条の38に基づく、全国社会保険労務士会連合会から厚生労働大臣への改善意見の申し出も可能であるので、先が開けてくる。

厚生労働大臣も学会誌に掲載された見解であれば、すれを無視することはできないので、法改正に繋がる可能性は極めて高い。

厚生労働大臣が動かなければ、代議士にも働きかけることとなるが、その場合も、学会誌掲載論文があれば、まず、動いてくれる。

今まで、数多くの弁護士でさえ不可能であったことを一社労士がやり遂げようとしているのであり、中々大変であったが、先の見通しがついてきた。

諦めず、長らく争っていただいているお客様も多数いるが、今しばらく頑張っていただきたい。

諦めなくて良かったと思っていただける日が少しでも早く来るよう私も最大限の努力を続けることとする。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 12:16| Comment(0) | 13 社会・仕組み

2022年01月22日

悪代官ばっかりともいえない社会保険審査官


中には相当に強引な社会保険審査官もいるが、制度の建付けを考えると社会保険審査官は保険者の立場を十分に考慮しなければならない事情が窺える。

今まで私は、ほとんどの社会保険審査官は、保険者の味方をして、公正な判断ができない人がほとんどであると感じていた。

しかし、社会保険審査官及び社会保険審査会法(以下「官会法」という)の規定を詳細に吟味してみると、そうとばかりいえない事情が浮かび上がってきた。

法律の規定上、再審査請求(社会保険審査会)では、請求者と相手方の構図となるが、審査請求では、請求者のほかは、全て第三者となるそうである。

従って、官会法第16条では、「決定の拘束力」なる規定がある。これによれば、保険者が負けた決定が出た場合、保険者側は、第三者であるので、保険者側から再審査請求はできず、決定に従わなければならないこととなる。

これでは、社会保険審査官としては、保険者を負かす(請求認容)決定に慎重にならざるを得ない。

私は、従来、法律上は、決定に不服のある場合は、どちらの側からも再審査請求ができるものと勘違いしていたが、上記のとおり、保険者側は、相手方ではない(第三者である)ので、法律上、再審査請求はできないそうである(厚労省保険局総務課官会法担当者回答)。そして、実際に保険者側から再審査請求が起こされたケースは皆無であるとお聴きしている。

そんな構成になっているとはつゆ知らず、審査官は悪代官ばっかりだと思い込んでいた私は、真面目な審査官に誤らなければならない。

しかし、人間の判断することであるので、この官会法の建付けについては不公平であると考えざるを得ない。

私は、これでは社会保険審査官は公平な判断を下せない環境下にあり、審査請求においても、保険者側から再審査請求が可能である旨法律を改正すべきではないかと考える。

社会保険審査会において、保険者が負けている事案も1割程度はあると思われるが、こちらについても、実務担当者(社会保険審査調整室)にお聴きすると、私の知る限り、保険者側から提訴したケースは一件もないといわれる。

そんな事情を知ると、保険者を負かせた決定や裁決には、余程の理由があったものと考えられ、保険者は、これ等の事件については、二度と過ちを犯さないよう深く反省し、内部においても、再演防止について周知徹底を図るべきである。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 10:34| Comment(0) | 13 社会・仕組み

2022年01月15日

もう一方の審査長


社会保険審査会の合議体構成には、第1部から第4部の4つの部会があり、第1部会と第3部会を、昨年12月16日(木)に公開審理を開いていただけた瀧澤泉審査長、第2部会と第4部会を高野伸審査長が担当してみえる。

各部会がどのような内容の審査を担当しているのかは、厚生労働省のホームページによると、第1部会及び第2部会については、被用者保険に係る再審査請求、第3部会及び第4部会については、国民年金に係る再審査請求を担当するとされている。

個別の事件毎に、第何部に割り当てとなるかについては、審査を受ける側の我々には全く分からないが、いずれにしても、この取り決めと、メンバー構成からすると、審査長も各委員も全ての分野について担当できることとなっている。

審査を受ける側としては、何部に係属したかによって、結果が変わってくるようでは、どうにも納得できない。しかし、この両審査長であれば、公平な審査が期待できそうで、過去において2件の却下(平成25年(国)第1021号 西島幸夫審査長 平成26年7月31日裁決、平成25年(国)第1188号 渡邉等審査長 平成26年7月31日裁決)を経験した時の陣容とは信頼度が格段に異なるように感じている。

そうすると、お互いの意見交換、連絡調整も必要と考えるが、実際はどうであろうか。瀧澤審査長が、高野審査長が代表を務められていた関係の深い書物を知らない筈がない。自然と期待は大きくなる。

私が、そのように感じているのは、瀧澤審査長が、年金決定通知書への時効消滅した旨の付記の解釈について、国の主張とは正反対の加茂規久男氏の考え方を採ってくださったことと、高野伸氏が、「社会保険関係訴訟の実務」が発行された当時の社会保険関係訴訟実務研究会の代表を務められていたことからである。

私が障害年金については、行政処分である裁定前には時効消滅していないと主張している根本は、以下の2つの書物(文献)によっている。

一つは、加茂紀久男(2011.12.1)「裁決例による社会保険法[第2版]」(101、109)であり、今一つは、法務省訟務局内 社会保険関係訴訟実務研究会(1999.5.30)「社会保険関係訴訟の実務」(252-253)である。

前者には、【裁決例E】平成18年1月31日裁決(障害基礎年金)裁決集(国民年金関係)917頁 棄却
「時効による権利の消滅は、直接法律の規定に基づいて発生する法律効果であるが、裁定請求に対する応答としての処分は、このような法律効果を含めて、当該処分が行われる時点までに生じた、給付の受給権の発生、消滅に関する一切の事実を考慮に入れた上で、その時点での受給権の有無及びその内容を公的に確認する行為であり、裁定の前提となる権利の発生・消滅に関する事項のうち、時効消滅だけが、前記処分における判断対象から除外されているということはあり得ない。したがって、裁定において受給権の一部の時効消滅が認定され、消滅した部分を除いた受給権のみが確認されているときは、当該時効消滅の判断に不服のある受給権者は、当然、当該判断の不当を主張して審査請求をすることができるはずであり、この点に関する社会保険審査官の判断(時効消滅は裁定とは無関係であるとして、これを不服とする審査請求を不適法とするもの)は失当である。したがって、本件審査請求も、これを前提とする本件再審査請求も適法である。」と書かれており、瀧澤審査長は、国や社会保険審査官の見解に反し、付記の処分性について、先例であるこの裁決の考え方に従って判断してくださったのである。

しかし、裁決については、結果が最重要であるが、同書籍が述べるように、「裁定の法律的性質は確認処分であると解されているにせよ、受給権の行使には必ず裁定を経なければならないとされており、裁定前に支分権を行使することなどおよそあり得ないところからみれば、裁定がないうちに年金の支分権の時効期間が進行を開始するとは考えられない。」と判断していただけるとは限らない。

だが、経緯からすると、いずれにしても、しっかりとした理由をお示しいただける可能性が強く、そうであれば、結果も付いてくるように感じて大いに期待しているのである。

後者については、「社会保険関係訴訟の実務」に、支分権の消滅時効の起算点について、「裁定前に支払期が到来したものについては裁定時(ただし、初日不算入)が起算点となる。」と明記されており、この書籍の、はしがきには、この実務研究会の代表者であるご本人名で、「本書が、社会保険実務関係者及び訴訟関係者に広く利用されることを期待するものである。」と述べられているので、上記同様、大いに期待しているのである。
タグ:被用者保険
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 10:56| Comment(0) | 13 社会・仕組み