2020年11月28日

債権執行のヒット


4年ほど前に取得した債務名義に基づいて、初めて債権執行を試みた。動産執行はやったことがあるが債権執行は初めてである。

会社の代表者である個人と法人の2人に対して強制執行できるのであるが、法人は実質的に倒産しているので、個人に対してのみ行った。

第三債務者は両方とも千葉県にあるT銀行T支店とS銀行T支店の2社とした。

倒産した法人自体の取引先を第三債務者としてもたぶん口座や預金残高はないと思われたので、債務者の住居及びその土地の登記事項証明書から割り出した抵当権設定銀行に目を付けた。

これも、債務者本人のものではなく、債務者が役員をしている同族会社の社有の土地建物であった。そこに、60台半ば過ぎの債務者夫婦が住んでいるのである。

残りの債権の額は、約70万円であったので、T銀行に50万円、S銀行に残りの約20万円を差押債権目録に割り振った。

S銀行については、11月12日付けで、本件により差し押さえられた債権は、存在しない旨の陳述書が届いたが、T銀行からは、11月20日付けで、1 差押えに係る債権の存否 ある、2 差押え債権の種類及び額 普通預金残高 金89円也、普通預金残高 金499,189円也、3 弁済の意思の有無 ある、4 弁済の範囲または弁済しない理由 上記2の範囲内 等の陳述書が届いたのである。

T銀行からの陳述書が遅くなっているので、たぶんヒットしたと思っていたが、それが現実のものとなり、大満足である。

請求額は、残元金に年6%の遅延損害金、及び執行費用が入っている。これで、数カ月もしない内に滞納し、全く支払をしない悪意に満ちた債務者に対して一矢報いた形になり溜飲が下がった。

加えて、できるだけ速やかに、T銀行に対して、S銀行に割り当てた分の債権執行を試してみるが、これは引き落とされた後になる可能性が高い。

なぜなら、債務名義は使用中で、再発行を依頼しなければならないし、執行が終わってみないと、次に債権執行をかけられる金額が、充当の問題があるので分からないのである。後者は、執行裁判所に聞けば分かるが、そこまでする必要もない。

これは推測であるが、執行費用、遅延損害金、元金の準に充当されると思われるが、その推測が当たっているかどうかを確認するのも楽しみの一つである。あるいは、時の経過によって増えてくる遅延損害金が最優先かもしれない。

しかし、これを失敗しても、10年以内には再度債権執行ができ、債務者が役員を務める会社に対しても直ちに債権執行ができるのであるから焦る必要はない。

これは、事件とは関係のないことであるが、債権執行を担当する部署は、暇で暇でしょうがないのではないかと勝手な想像をしていたのだが、さにあらず、司法の機関について、適正に人員配置されているようで安心した。

相手が国の場合、裁判に勝ちさえすれば、回収の心配は全くないのであるが、相手が一般人である場合は、法的措置による最終的な満足の方法までを念頭に置かなければならない。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 09:14| Comment(0) | 13 社会・仕組み

2020年11月21日

やってしまった年金法の理念に反する条文改正


私も、つい先日知ったことであるが、国年法第102条1項及び厚年法第92条1項が、改正民法施行に合わせて改正されている。

平成19年7月7日以降に基本権が発生する事案に対する当初の改正法は、以下のとおりでした。
「第102条  (時効)
年金給付を受ける権利(当該権利に基づき支払期月ごとに又は一時金として支払うものとされる給付の支給を受ける権利を含む。第3項において同じ。)は、その支給事由が生じた日から五年を経過したときは、時効によつて、消滅する」

令和2年4月1日施行の民法の改正に合わせたとされる最近の改正内容は、以下のとおりです。
「第102条 (時効)
年金給付を受ける権利は、その支給すべき事由が生じた日から五年を経過したとき、当該権利に基づき支払期月ごとに支払うものとされる年金給付の支給を受ける権利は、当該日の属する月の翌月以後に到来する当該年金給付の支給に係る第十八条第三項本文に規定する支払期月の翌月の初日から五年を経過したときは、時効によつて、消滅する。」(いずれも、下線は、私が付した。)

何の疑問もなく改正されたことと思うが、後者の下線部が大きな問題を抱えています。厚労省年金局年金課の説明によると、今回の改正である後者は、改正民法の主観的起算点の新設に合わせて、客観的事実による起算点により支分権の起算点を明確化・具体化したとされています。

後者の法改正の何が問題かというと、障害年金について当て嵌めた場合、権利不行使の有無にかかわらず、支分権の消滅時効の起算点を国年法第30条1項の規定(認定日請求)の趣旨を考慮せずに国年法第102条1項で決めてしまったことにあります。これは、国年法第30条1項の定める事実、詰まり、障害認定日に受給権が発生する(= 裁定前には受給権は発生していない)という事実と異なります。この改正法による取り決めは、消滅時効制度の原理原則に反することであるので、このような規定は、法理念に反し、法解釈の根本に係わる部分となります。

もう少し具体的に説明します。障害認定日請求である国年法第30条1項では、「障害基礎年金は、疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において次の各号のいずれかに該当した者が、当該初診日から起算して一年六月を経過した日(その期間内にその傷病が治つた場合においては、その治つた日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至つた日を含む。)とし、以下「障害認定日」という。)において、その傷病により次項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときに、その者に支給する。」と規定、すなわち、裁定前には支分権は発生しない旨を規定しながら、国年法第102条1項では、「当該権利に基づき支払期月ごとに支払うものとされる年金給付の支給を受ける権利は、当該日の属する月の翌月以後に到来する当該年金給付の支給に係る第十八条第三項本文に規定する支払期月の翌月の初日から五年を経過したときは、時効によつて、消滅する。」と、起算日を未だ、発生もしていない幻の年月日として固定してしまいました(この条文の「支給する」は、講学上「受給権が発生する」という意味だとされている。)。
これは、第30条1項に反し、その面では明らかに誤った改正です。

誤りの理由を述べます。障害年金においては、初診日の決定権は保険者にあります。受給権者の申し出た初診日は前後にずらされることがあります。後にずらされることは稀ですが、再発初診の場合に生じます。従って、障害年金においては、裁定前には、どんな場合でも、裁定前には障害認定日が決っておらず、支分権の消滅時効の起算日が不明です。不明の起算日を事実とは関係なく、法律で決めてしまうということはあってはならないことで、重大な権利の存続、消滅に故なく影響を与えます。

改正条文のこの取り決めは、認定日請求についていえば、基本権と支分権を混同した取扱いになってしまいます。なぜなら、規定上、支分権の発生は、障害認定日の属する月となるからです。初診日の決定権は、保険者国にあり、裁定前には障害認定日が決まることはどんな場合にもあり得ないのです。

従って、この改正条文は、客観的事実ではなく、独立した権利であり、一貫して区別して取扱われてきた権利(年金時効特例法施行前に、支分権については、会計法が準用されていたことから、この区別は自明である。)を混同してしまったことになります。

更にいえば、この改正条文では、通常、優先適用になる大原則である主観的起算点による規定が存在せず、客観的起算点を採用すること自体合理性がなく、仮に、客観的起算点によったものであるとした場合でも、民法に合わせたのであれば10年とすべきところ、5年としています。

従って、障害年金については、本件時効については、「権利不行使」という、時効消滅には絶対に必要となる要件事実が存在しなくても、この規定該当分については、時効消滅させることが可能となってしまいます。これらについては、連合会から厚生労働大臣への労働社会保険諸法令に係る運営の改善に関する意見の申出手続きを採ると共に、係争中の事件等についてもこの経験を活かして対応していきます。

ほかにも内部矛盾があります。改正法によれば、国年法第19条1項の規定は、死亡した受給権者について未支給年金があるときは、その配偶者等一定の者が自己の名で請求できる旨の規定ですが、検討もされないうちにこの規定の趣旨が埋没の憂目にあっているのです。

無茶な法改正等には、法制局等がチェック機能を果たすものと考えていたが、これが果たされておらずエリート集団に対しても失望せざるを得ない。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 09:54| Comment(1) | 1 障害年金

2020年11月14日

期待を裏切られた金沢地裁の判決


昨日13:10は、金沢地裁 平成30年(行ウ)第10号 処分取消請求事件、令和2年(行ウ)第2号 損害賠償請求事件 の判決日であった。

このブログでも何度も紹介しており、この事件については、年金事務所等の受付拒否という個別事情があるので、ほぼ勝訴間違いなしと期待していた事件であるが、判決主文を聴きに行った原告本人KF様からの報告によると、「原告の請求は却下する。」というものであった。

今まで何度も審議してきた事件であるので、却下はあり得ないし、一部棄却一部認容もあり得るので、この点について、確認を求めたところ、「原告の請求は全て棄却する。」というものであった。

棄却理由は、判決文を読んでみないと分からないが、個別事情については、証拠不十分というもので、障害年金の支分権は、そもそも裁定前に時効消滅することはあり得ない点については、深く検討せず、平成29年10月17日第44号最高裁判決を安易に引用したものであることが推測できる。

後者について、第一審で勝っても、控訴され、最高裁まで行く可能性が大であり、前者について勝てば、控訴してくる可能性は低いので、本件については、前者について重点的に主張してきたのであるが、このような結果になった以上、後者についても、徹底的に争い控訴審において逆転させなければならない。

この主張内容については、被告が反論できないほどの強力な主張が3つほどあるが、これについては、判決文を読んでからこのブログでも触れていきたいと思っている。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 08:15| Comment(0) | 1 障害年金