2020年10月31日

未だに来ない判決日の通知


今月13日(火)に結審した東京地裁の事件について、結審の当日、判決日を「後日通知する」と言われたのも初めてであるが、未だに通知のないのも不思議なことと思っている。

楽観的によく考えれば、今までの判決理由とは違った万人が納得する判決文を作らなければならないので、その完成日が算定できない状態であるとも考えられなくもない。

しかし、問題が問題だけに、そうは簡単にいかないかもしれない。従来の裁判所の判断を俯瞰すれば、最早論理の問題とは言い難い判決理由ばかりである。

原告の最新の主張は、証拠を示し、裁定前には、障害認定日が決ることはなく、時効期間を計算できないのに抽象的観念論で時効消滅させるのは、法律的解釈ではない、とする主張であるので、真面目な裁判官であれば、従来どおりの判決理由は書けないものと思われる。

一方、被告側の準備書面での主張も変わってきている。つい先月までは、被告が負けることなど微塵も考えていないといった姿勢であったが、これは、ごく最近の上記東京地裁とは別の裁判でのことであるが、変なことを言い出したのである。

「国年法16条の裁定の存在しないことが支分権についての消滅時効の法律上の障害に当たり、「権利行使することができ」ないと解されるとすると、これまでの行政実務上、時効消滅しているとして取り扱っていた過去分の年金について支払うために多額の給付費が必要になるおそれがあるなど、多大な影響がある。」と主張するのである。

この主張は、自らの怠慢により引き起こされたこと(被告がそれを防止しようと思えば、容易にできたことを内簡で運用したこと)を、国民の負担に押し付けるものであり、法律的な主張ではない。

裁判所に対して、「多額の給付費が必要になるから、政治的判断をしてほしい」と懇願しているに等しく被告の主張とは思われない主張内容である。

従来の被告の主張には、このような消極的な姿勢は一切なく、最近の原告側の主張が説得性を強めてきたので最後の手段に出たものと思われる。

被告の主張の大勢を時間の経過と共に追うと、「法律上の障害ではない」から、「法律上の障害であっても…」に替わり、今回は、「多額の給付費が必要になる」と変わっている。

原告側には、時の経過と共に、新しい強力な主張が現れているが、被告側の主張は、基本権に対する権利不行使を支分権に対する権利不行使とみなす主張を越える強力な主張は出されていないのが客観的経緯である。
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2020年10月24日

信用ならない最高裁判例


私は、今の今まで、裁判における最高裁判例には、ほとんど間違いはないものと信じ切っていた。

しかし、平成29年10月17日判決の身体(左下腿切断)の障害に係る44号判決(民集第71巻8号1501頁)をよくよく読むと、過去の最高裁判例(有名な判決である平成7年11月7日本村年金訴訟判決 高裁第三小法廷(民集第49巻9号1829頁))からの引用(「裁定は、確認行為にすぎない」)が、重要な部分で誤っていることが判明した。

この判決に対しては、過去の最高裁判例(著明判例 本村年金訴訟判判例)を改変引用しているとして訴追請求状が出されていることは既に何度も紹介しているところであるが、その根拠を発見したような事態を目の当たりにしたのである。

訴追請求状では、両最高裁判決の判旨を真逆にしていることを指摘しているが、今回の発見は、その理由としている部分の引用自体が改変引用であったということである。

44号判決は、212号判決が、裁定前には「支給されない」と判示しているので、その事実までは否定していない。

従って、現在においても、212号判決と44号判決は、整合性が保たれていなければならないこととなる。

具体的に、212号判決の「支給」について、これをそのまま、「支給」=「行使」と認めれば必然的に、「裁定前に時効消滅することはない」こととなる。

しかし、国やほとんどの裁判所の判断では、「支給」 ≠ 「行使」の関係としている。従って、基本権に対する権利不行使を支分権に対する権利不行使に結び付けなければならないのですが、以下の条件を全て満たすので、基本権に対する権利不行使を支分権に対する権利不行使とみなせるという論旨です。

44号判決が挙げる条件は、以下の3つですが、その全てが満たされていないので、私が問題としているのです。 @ 発生要件等の規定が明確である、A 裁定は確認行為にすぎない、B 裁定請求さえすれば支給は受けられる、です。

私は、今まで、212判決でも「裁定は、確認行為にすぎない」という表現がずばりそのまま使われていると思いこんでいたのですが、212号判決文を確認したところ、そのようには言っていないのです。

212号判決においては、「画一公平な処理により無用の紛争を防止し、給付の確実性を担保するため、その権利の発生要件の存否や金額等につき同長官が公権的に確認するのが相当であるとの見地から、基本権たる受給権について、同長官による裁定を受けて初めて年金の支給が可能となる旨を明らかにしたものである。」とは述べているが、「確認行為にすぎない」とは判示していないのです。しかも、その目的は、給付の確実性を担保するためです。

「すぎない」というのは、確認以外の意味をなさない、ということであり、明らかに、裁定の裁量権を否定している。一方、「確認するのが相当である」というのは、確認することが必要であるといっており、確認に裁量権のあることを否定いていない。この違いは明らかである。

国が、似て非なる表現で用いたものが、裁判所においても使われるようになってしまったと思われるが、これは、212判決の判旨とは異なっており、その判旨からは、はみ出た部分で、独り歩きを始めた主張となっています。

しかも、212号判決最高裁判例解説(脚注F 939頁〜941頁)によると、確認行為型の行政処分にも、「既に発生している権利等に変動を及ぼす」ことができる機能が存在します。しかも、212号判決は、通算老齢年金に係る記述です。
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2020年10月17日

東京地裁の事件の結審


10月13日 (火) 勿論 障害年金 支分権消滅時効の 争いであるが コロナの影響で 随分 伸ばされたが 結審を迎えた

たった2枚の書証によって 保険者が弁済期である支払期月をおろそかにしていること及び障害年金の初診日は 保険者に決定権があるので受給権者の 申し出日はしばしば前後に ずらされること が しっかり証明できるのである

結審は 予測ができたので 9月26日付けで 実際に実務で使っている 「年金請求書(国民年金・厚生年金保険 障害 給付 )の受付控」という書証を 第4準備書面 に添付して 提出しておいた

当日は 「法廷での 口頭陳述に代えた メモ」を 予め 書記官に手渡すようにして 事前に裁判官が 読める体制を作った

今回の 被告及び裁判所の対応は 従来にない 期待できるものがあった

被告は 反論しないといい 裁判長は 書証に沿った判断をすると 発言してくれたのである

従来の判旨の判決理由を書くのであれば そんなに時間を取らないので 判決日は 即刻言い渡されるのが 通常であるところ 今回は 後日 通知するとのことであった  こんなことは初めてである

そして未だに 通知がない そんなに簡単には 事が運ばない 裁判ではあるが 相当の期待を しても良いような 気がしてきた

以下に「法廷での 口頭陳述に代えた メモ」を 参考までに 記載した


2020 10 13 (火)
原告 A.K ㊞

法廷での 口頭陳述に代えた メモ


第1 被告への注文
被告は原告の新しい主張に対して、正対した反論ができていない。以下の事項に対して、真面目に正対した反論をすべきである。

 全ての障害年金の事案について、裁定前には、初診日は決まっていない。被告は、裁定前に時効が完成していると主張するが、この場合、被告はどのようにして時効の起算日を決めて、時効期間を計算するのか。
実際に計算の仕方を示していただきたい。原告が考えるに、いかなる方法を駆使しても、現実の計算は不可能である。これを可能とする従来の被告の主張は観念操作に基づいているといわざるを得ず、これは、法律的解釈とはいえない。

 障害年金の裁定は、初診日証明義務及び診断書提出義務があり、これは法律の規定に基づく法定条件である。
被告は、これを法定条件ではないと思い込み、反論の必要もないと考えているようであるが、「条件」とは、「法律行為の効力の発生又は消滅を、将来発生するかどうか不確実な事実にかからせる附款」である(「法律学小辞典」有斐閣)(下線は原告が付した)ので、これは法定条件に相違ない。

第2 裁判所へのお願い
類似事件にかかる従来の判決は、原告の重要な主張について深く検討することなく、原告の主張は「独自の見解」であるとして、誤った判決を下している。
従って、貴庁 には、下記の事項について、 憲法・法律及び良心にのみに拘束される真剣な検証をお願いしたい。
原告は、裁判所を信じ、真面目に争っているのでそれに応えていただきたい。

 212号判決は、「同法16条は、…、基本権たる受給権について同長官による裁定を受けて初めて年金の支給が可能となる旨を明らかにしたものである。」と判示しており、原告の主張と同じである。

2 類似事件である44号判決の第一審である札幌地裁の裁判官は、「支分権たる受給権の消滅時効の起算点がその本来の各支払期日である限り」(下線は原告が付した)と限定を付けて疑問の余地を残している。
従って、この事実からしても、原告の主張は、「独自の見解」ではない。

3 本件のような社会保険関係行政訟務に係る国側の総本山である法務省訟務局内の社会保険関係訟務実務研究会(当時の行政訟務第二課長の高野伸氏が代表)が、本件の起算日を「裁定前に支払期が到来したものについては裁定時(ただし、初日不算入)が起算点となる。」と誤解の生じないように明らかにしている。これは正しく、原告の主張と全く同じである。

社会保険審査会及び裁決例による社会保険法の著書である加茂紀久男氏が「裁定の法律的性質は確認処分であると解されているにせよ、受給権の行使には必ず裁定を経なければならないとされており、裁定前に支分権を行使することなどおよそあり得ないところからみれば、裁定がないうちに年金の支分権の時効期間が進行を開始するとは考えられない。」(下線は原告が付した)としており、原告の主張と全く同じである。

5 名古屋高裁平成24年4月20日判決(名古屋高裁平成23年(行コ)第69号障害基礎年金支給請求控訴事件)(原判決変更、一部認容。上告審(最高裁平成26年5月19日)で国の上告不受理)は、「国民年金法が、受給権の発生要件や年金給付の支給時期、金額について定めており(同法18条、30条、33条等参照)、社会保険庁長官の裁定は、上記のとおり、確認行為にすぎないことを考慮しても、受給権者は、基本権について、社会保険庁長官に対して裁定請求をし、社会保険庁長官の裁定を受けない限り、支分権を行使することができないのであって、社会保険庁長官の裁定を受けるまでは、支分権は、未だ具体化していないものというほかはない。したがって、社会保険庁長官の裁定を受けていないことは、支分権の消滅時効との関係で、法律上の障碍に当たり、時効の進行の妨げになるというべきである」(下線は原告が付した)と判示している。これは、原告の主張と全く同じである。

6 平成30年10月5日付け訴追請求状(アシの会が請求者情報を塗り潰しwebで公開、甲4)は、44号判決の判旨について、212号判決を改変引用しているとして「訴追請求の事由(その1)」としている。これについては、原告も全く同じ見解である。


これだけの権威ある機関等が原告と同じ見解を採っているのであり、原告の主張は、決して、「独自の見解」ではない。
以上


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