2017年11月18日

障害年金支分権が停止条件付債権である旨の補充


昨日は、先週ブログでアップした要素について、最高裁が左下腿切断の障害について出した判決対応の打合せに六本木まで行ってきた。先週のメモは、今まで多くの裁判において議論されていない事項についてメモしたものであるが、加えて、しっかり主張すべき内容として、出掛ける前に標記に係る分かり易い事例として気付いた内容に、初診日証明義務が裁定請求者(受給権者)にあるという内容がある。

当日は、当然そのことも意見発表したのだが、関係するお三人の弁護士の先生方は、最高裁において、あのような判決が出た以上、先ずは、精神の障害について、その特徴を訴えて、一般的にも個別事情においても、このような事情の者が裁定請求に及ぶことは困難であり、これに消滅時効を援用するのは信義則に反する旨の主張がベストであるとのお考えである。

なぜならば、最高裁で判決が出た以上、これについて、地裁の裁判官がその内容と反対の判決を出すことを期待しても無理であるとおっしゃるのである。

それは、現実を考えればほとんどそのとおりであるが、私は、この考え方には不満がある。中には信念のある裁判官も1〜2割はいると言われており、それが重大な真理である以上、私は、その審理については、それでもなお主張していくべきとの考え方を持っている。そうすれば、最高裁で議論のできるチャンスがやってきたのだから、真面な議論をすれば最終的には正義に適った公正・公平な判断がされるものと思っている。

従って、私としては、妥協案ではあるが、まとめとして、信義則違反を主張した後に、次のような趣旨の主張を加えることで結論としたく思っている。

結果、どのようになるかは今のところ分からないが、このことに係る私の考え方を簡記する。

障害年金を受給するには、3つの要件が必要不可欠である。これを簡記すれば次の3要件である。

@ 被保険者期間中に初診日があること。(20歳前障害は例外あり)
A 一定の期間において国年令別表又は厚年例別表1に定める障害の状態にあること
B 初診日の前日において保険料納付要件を満たすこと。(20歳前障害は例外あり)

従って、初診日が決まらなければ、それ以降の事柄は一歩も進まない。基本的に、障害認定日及び支払期月は、初診日さえ決まれば、当然にやってくる。

被告のように、初診日を除いて考えれば、支払期月の到来によって、その翌月の初日に、支分権消滅時効の進行が始まるという考え方が出てきてしまうが、実際には、そのような考え方は、絶対に起こり得ない。

しかし、初診日は、裁定請求者(受給権者)に証明義務(裁定請求書に記載し、医証等の提出義務がある)がある。それができなくて、障害年金の請求自体を諦めざるを得なかった人はあまた居る。

この現実を見れば、初診日証明は障害年金支分権発生の停止条件と評価でき、これは万人が認める事実である。

これを時系列で考察すれば、初診日の証明は裁定請求前に行われることは絶対になく、裁定請求前にこの条件が成就することは絶対にない。

従来原告は、障害等級認定等があることを停止条件であると主張していたが、今回これを万事に当て嵌まる初診日証明義務について主張する。このことは、本件のような重度の精神障害については、既述のように発症初期の段階では、病名すら特定されないことや初診日が何時であるかも特定できないことが多い。このような事情の場合は、裁定請求者が初診日証明という義務を果せないことが多く、これが停止条件である事実を特に尊重しなければならないものである。

結論として障害年金の支分権が裁定請求前に時効消滅するなどということは、法律的解釈としては絶対にあり得ないのである。
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2017年11月11日

10.17左下腿部切断の障害に係る最高裁判決に対する反論要素について…審理外事項対応


過日、現在障害年金支分権消滅時効事件について共同受任体制で協力関係にあるG法律事務所から、現在係争中の事件に係る打合せの要請を受けた。

標記最高裁の判決に対する具体的な対応策がテーマになると思われるが、これについては、私は、この事件で議論されていない点及び国や裁判所がなぜ論理矛盾を承知で無理な主張を繰り返すのかという根本原因(下記5)を掘り下げないと法律的解決は難しいと考えている。

以下に、上記の観点で検討を要する要素を整理したのが以下のメモであるので、色々なご意見をお聞きしたい。

1 身体の障害については、権利の混同をさせてまでして曲論を採用する理由がない
(1) 老齢の場合の受給権者への通知等の国の努力の不存在  ※1
(2) 対象者の中には行方不明者もいる実態
(3) 基本権と支分権は独立した権利であることは被告も認めているが、なおかつ権利の混同が行われていること

(注)従来裁判所では、年金の種類による実体の違いを一貫して認めておらず、老齢年金と障害年金の違いを初めて認めたのが、平成27年(行コ)第61号
  平成28年5月12日 未支給年金支給請求控訴事件 福岡高裁判決である。 遅々として進まないのが裁判所の実態である。

2 原告側が十分な主張や証拠を提出していないので、その点審理不十分な判決である
(1)主張主義
(2)自白の拘束力
(3)職権証拠調べの禁止

3 確認行為型の裁定には裁量権があるから「裁定請求=裁定」とはならないこと
(1) 社会保険関係給付の受給権が実体法帖いつどのようにして発生するかは、その性質かあら当然に導き出されるものではなく、結局、立法政策により決せられるものであること
(2) この立法政策は既に定着しており、行政権でも司法権でも変更できないこと
(3) 確認行為型の裁定には裁量権があり、これが行政処分であるので、処分後でなければ支分権は発生しないこと
(4) 最高裁の判決内容では、行政処分と審査請求の時期の整合性が採れないこと

4 支分権消滅時効完成の立証責任は被告側にあること
(1) 障害年金の受給権は、年金法により、差押えや課税さえも禁止されている最優先して支給されるべき権利であること
(2) 被告の抽象的観念論では支分権消滅時効の完成が立証されていないこと
(3) 権利不行使の不存在という現実の問題と観念操作による権利不行使とは同じ土俵に乗っていないので、この矛盾が矛盾として取扱われていないこと

5 被告や裁判所の判断の根底には被告が基本権について時効の援用をしない運用をしていることが根を張っている
(1) 平成24年(国)第264号 裁決書 平成25年7月31日 審査長 渡邉 等   審査員 矢野 隆男   審査員 森 俊介  ※2
(2)平成24年4月20日 名古屋高裁判決 平成23年(行コ)第69号 障害基礎年金支給請求控訴事件 裁判長裁判官 渡辺 修明  裁判官 嶋末 和秀  裁判官 末吉 幹和   ※3
(3)労働判例研究 第1226号 ジュリスト2014 May 102 頁 公的年金支分権の消滅時効の起算点 −障害基礎年金支給請求事件− 東北大学准教授  嵩 さやか ※4


※1(参考)
被告の失権防止に係る相応の努力について
 老齢年金については、支給開始年齢の誕生日3カ月前に請求用紙が送られて来る。また、納付月数が300月未満の方には、他にカラ期間が無いかどうかの確認ハガキが来る。或いは、300月に達していても、基礎年金のみで65歳からしか手続できない場合は、その旨を明記した通知が届く。かつ、70歳到達に至ってもなお請求書が提出されていない方については、「お知らせの手紙」が送付されて来る。

 老齢年金について例外が許される事情
@ 保険事故自体の存在及び発生時期の客観性
A 裁定請求すれば100%受給に結びつくこと、及び
B 被控訴人が失権防止に相応の努力をしていること

※2「また、基本権について保険者の裁定を受けていない受給権者は、本来、支分権を行使することができないのであり、これを本件に即してみれば、本件障害年金の受給権発生日は平成13年5月26日であるところ、本件裁定請求は平成24年8月22日に受け付けられており、本件資料上、基本権に係る時効の進行を妨げるような客観的な事情が存するとは認められないから、基本権に係る消滅時効は、本件裁定請求がなされた時点で既に完成していたのは明らかであり、そうであるとすれば、そもそも本件不服申立分に係る支分権である本件支払請求権の消滅時効の当否を論ずる余地はないと言わざるを得ない。にもかかわらず、原処分を含む本件裁定がなされたのは、保険者が基本権に係る時効の利益を放棄した上で、支分権についてのみ前記1記載の関連法規定に則って時効消滅の取扱いをしたということであり、このような取扱いは、受給権者保護の観点から妥当なものであると評することはできるが、だからといって、本来、時効消滅していたはずの基本権についてはこれを検討の外におき、専ら、基本権につき保険者の裁定を受けていないことを支分権の消滅時効との関係で法律上の障害であるか否かを論ずること自体、本末転倒であって相当でないというべきである。」(6頁下から1行目)

※3「したがって、社会保険庁長官の裁定を受けていないことは、支分権の消滅時効との関係で、法律上の障碍に当たり、時効の進行の妨げになるというべきである。(このように解しても、時効の中断、停止などの事情がない限り、国民年金法102条により、権利発生の日から5年が経過すれば、基本権について消滅時効が完成するのであるから、特段の問題が生じることはないと考えられる。)」(4頁下から5行目)

※4「V、結論における妥当性 本判決についてはUで示した解釈上の問題のほか、結論としての妥当性にも問題がある。すなわち本判決に従えば、権利発生(受給要件充足)の日から5年が経過した場合、年金給付を受ける権利(基本権。学説では『裁定を求める権利』と解する見解も有力である〔岩村・前掲108頁〕について消滅時効を援用しなければ過去に発生したすべての支分権について支給がなされるが、他方で、基本権について消滅時効の援用を行って基本権をその起算日(受給要件充足日)に遡って消滅させれば(民144条)、そこから発生していた支分権も(その消滅時効の起算点の時期にかかわらず)当然にすべて(直近5年を含めて)消滅することになる。
  こうした結果をもたらす本判決の解釈は、支分権につき全部支給か全部不支給かという選択肢のみを与えるため、上述のような従来の行政実務が行ってきた柔軟な中間的解決の可能性を排除してしまうことになる。しかも本判決は、支分権の消滅時効の起算点について一見受給権者に有利な解釈をしているようであるが、判旨Uによれば、基本権については法令の規定どおり消滅時効期間が経過したらこれを援用して基本権自体を消滅させるべきだという前提に立っていると思われるため、この前提も踏まえて行政実務が本判決に従うと、むしろ受給権者にとって従来の取扱いより著しく不利な結果となってしまう。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 13:46| Comment(0) | 1 障害年金

2017年11月04日

障害年金支分権消滅時効問題に係る厚生労働省による不服申立て妨害に対する当面の対処について


私は、標記に対する対処は、勿論訴訟を考えているがそれまでには準備等時間がかかる。従って、当面の対処策として、某地元代議士に、国が正当な不服申立て手段を教示するよう働きかけていただくこととした。以下、その依頼状の(案)である。行政の担当者については、敢えて実名とさせていただいた。


平成29年11月吉日

衆議院議員 ?? ?? 先生
愛知県豊田市汐見町 4−74−2
木戸社会保険労務士事務所
代表者 木戸 義明 ㊞

ご依頼の件について


前略 私は、ある事件を契機に、障害年金の支分権(基本権の発生に基づき月単位で支給される具体的債権であり、基本権とは独立した権利)の消滅時効の保険者国の運用誤りについて多くの事件で国と争っている社労士です。

年金については、5年の消滅時効とされていますが、国の運用は、観念操作により、基本権に対する権利不行使(詰り裁定請求遅れ)を支分権に対する権利不行使とみなしたものであり、受給権者が権利行使する機会さえ全くない内に消滅時効が完成しているとされているところに問題があります。

この問題自体は、色々な事情や実態があり、正否の評価にも諸説あるので、不服申立制度及び裁判で決着させればよいものと考えています。

しかし、この不服申立て自体を担当省である厚生労働省が違法に道を塞いでいることは、法治国家の国の体制として許されるものではありません。障害年金を受給している人は、労働が制限されている等でほとんどの人が経済的弱者です。この運用に不服でも、大半の方は、弁護士への着手金や裁判所への手数料(収入印紙代)すら払えないのです。

我が国は、このような重大な権利に係る国の過誤に対して不服申立制度が無いなどという法制にはなっていません。厚生労働省が自らの不都合を隠すために誤った運用をしているだけのことです。しかも、これは同省が故意に生み出している大量の不具合です。

平成28年4月の全面改正前の旧法の行政不服審査法(以下「行審法」という)第57条2項(新法では、第82条2項)では、「行政庁は、利害関係人から当該処分が不服申立てをすることができる処分であるかどうか並びに当該処分が不服申立てをすることができるものである場合における不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てをすることができる期間につき教示を求められたときは、当該事項を教示しなければならない。」と定められています。

私は、上記の質問を何度もしていますが、保険者自身が、正解を知らない、又は故意に受付を拒否しているのだから教示がある訳がありません。

そこで、私が貴職にお願いしたいのは、厚生労働大臣に対する正当な不服申立て、具体的には、行審法に基づく厚生労働大臣への異議申立てを違法に却下している実態を早急に是正していただきたいのです。

この違法な却下について、厚生労働省の却下理由について少し説明します。分かり易く具体例で説明します。

裁定(年金)決定通知書、別紙1 3/3 の朱下線部が問題の行為(付記)です。

決定書、別紙2の2頁及び3頁朱下線部では、この付記は、「見解を書面に付記したものに過ぎない」、「事実を通知しているものであり、公権力の行使に当たる事実上の行為に該当しない」、及び「当該記載は単に事実の通知であって、行政庁の処分には該当しない」ことを主要な却下理由としています。

ところが、別件裁判における国の準備書面、別紙3の9頁朱下線部では、厚生労働大臣は、「平成22年1月以前の年金は、時効消滅によりお支払いはありませんと記載することで、消滅時効の援用の意思表示を行った」と主張しています。これについては、年金法の改正で、平成19年7月6日以降に受給権を取得した者には、時効を完成させるためには時効の援用が必要になったのですが、これについて国は、この付記以外には何もしていないので、裁判での国の主張の方が正しいことは明らかです。

この両者は、正に正反対のことを言っており、国の行為として許されることではありません。この受給権は憲法第25条2項に基づき具体化した重要な権利であり、障害年金の場合、年金法により差押えや課税まで禁止(国年法第24条、25条及び厚年法第41条)された最優先されるべき権利です。

この行為自体、裁定(年金)決定通知書と同時に同書に付記する形で行政処分と一体としてなされており、これ自体を行政処分の一部とする考え方もあります。この効果も行政処分と同じで実質的に公定力があるものとして取扱われています。従って、この不服申立ての受理自体の要件審査の厳しい社会保険審査会でさえ受理され、審査のうえ、苦しい理由を付けて却下している実例もあるのです。社会保険審査会は行政処分のみを審査し、事実行為については審査対象としない機関です。

私が、代理人として審査請求した事案では、私が、保険者が「事実行為」であるといっている旨を記載したことを良いことに、社会保険審査会では、事実行為は審査の対象外であると複数の事件が却下されています。従って、私は行審法の主管庁である法務省や、全国社会保険労務士会連合会に具体的事例を照会して、社会保険審査官及び社会保険審査会法(以下「官会法」という)で対象外ならば一般法に立ち戻るので同法に基づく厚生労働大臣への異議申立ては可能である。同法は、事実行為についても申立て可能との回答を得て20件を超える受任事件を手続していました。勿論、その照会の前には、弁護士にも相談して同様の回答を得ています。

ところが、平成29年6月23日付で改正新法適用分の2件、同年7月3日付で旧法適用分14件、同年同月10日付で旧法適用分6件と一挙に却下の処分が下されました。旧法適用分については、最も早く申請した方は、丁度2年10カ月待たされた後、理不尽な違法な却下をされた訳です。

不服申立ての一般法である行審法の目的は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための体制を定めること、並びに国民の権利利益の救済を図ること及び行政の適正な運営を確保すること(改正前新法も大綱同じ)です。厚生労働省の行為は、これに大きくはずれています。

この却下の事務を担当したのは、従来の担当者佐藤洋平氏が転出したので、重永将志旧年金局事業管理課給付事業室長でした。そして、本人はその数日後には他省に転出しています。初期の異議申立ての方は2年10ヵ月待たされた挙句の果てに、違法な却下処分に処されたのです。この間には、不作為の異議申立てをしていますが、未だ採るべき義務が果たされていません。旧法の不作為の異議申立てには、「20日以内に、申請に対する何らかの行為をするか、又は書面で不作為の理由を示さなければならない。」と法定されていました。これさえ無視され守られていません。

厚生労働省は、これらの行為に対して罰則規定がないことを良いことに、やりたい放題です。これは福祉行政を担う厚生労働省のすることではありません。この行為は、犯罪といっても過言ではありません。

以上のように、我が国の法制、事柄の性質、行政不服審査法の趣旨、社会保険審査会の受理実例等から考えて、この問題が一切の不服申し立て手段がないというようなことは考えられないことです。色々書きましたが、要するに、「国が国民に嘘を言って、不服申立ての道を閉ざしてはならない」ということです。

従って、所管省である厚生労働省に対して、本案に係る不服申立て手段について、官会法を含め、正しい不服審査申立て方法を明らかにするよう貴職から主管課長高橋和久氏等に要請していただきたくお願いする次第です。
草々

 


代表者  木 戸  義 明
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